~抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などの薬を減らしたりやめたりしたい方のために~
日本の保険診療で行われている近代西洋医学による標準治療は、英語ではアロパシー医学(allopathic medicine)と言われる対症療法の医学です。日本語では逆症療法と翻訳され、症状を押さえることが治療の目的となり、その方法として薬物・手術・放射線が中心となります。すなわち、根本原因の治療は実はほとんど行われていないのです。このため、症状が改善しない限り薬物療法を継続したり手術を繰り返したりすることになります。
精神科や心療内科で使われる抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などもアロパシー医学の治療法であるため、症状が改善しない限り長期間に渡り服用し続けることになり、副作用や依存性などの問題が出てきます。薬は、本来身体の中には存在しない化学合成物質であるため、必要な時に必要な量だけピンチヒッターとして使用するのが好ましく、その間に症状の原因を突き止めて改善していくことが本当の意味での治療となります。
当クリニックで行っている「減薬・断薬プログラム」は、症状の原因となる要因を自分自身で解決していくことができるようにしていきます。脳の働きに影響する薬物の減量や中止は、できるだけゆっくりと薬がない状態に心身を慣らしていく必要があります。この場合、その時に起こる自律神経系、内分泌系、免疫系などの調整系システムの変化を、自分自身でセルフコントロールできるようにしておくことが重要なポイントとなります。
ベンゾジアゼピン離脱治療として有名な「アシュトンマニュアル」の中でも、行動療法や認知行動療法などの心理療法、アロマセラピーや瞑想などの補完代替療法、エアロビクスやウオーキングなどの運動療法を併用することで非常に優れた長期的効果が認められると記載されています。これらは、自分自身で「思考」と「行動」を変えることができるようになることで、減薬・断薬による心身への負担を減らしてくれるとても良い方法です。
また、低血糖状態や栄養障害などを改善しておくことも重要です。薬は、体内ではアルブミンというタンパク質により運ばれています。栄養障害でタンパク質が少ないために薬の効きが悪くなり薬の量が増えている場合は、まずは栄養状態を改善することが減薬の第一歩となります。また、糖質中心の食事による食後の高血糖とその後の低血糖といった血糖値の乱高下は、自律神経のバランスを崩すため減薬を困難にしてしまいます。
一般的に幸せホルモンと言われるセロトニンなど脳内神経伝達物質(脳内ホルモン)の材料は、アミノ酸、ビタミンB6、ナイアシン、鉄、葉酸などの栄養素であり、これらが不足していると不安感や抑うつなどの症状の原因となってしまいます。その場合、食事内容を改善したり、必要であればサプリメントも併用したりすることで、症状改善や減薬・断薬が容易になります。このように、神経細胞や神経伝達物質の材料不足を解消する分子栄養療法の併用も効果的です。
当クリニックでの薬に頼らない治療は、「思考」「行動」「栄養」の3つの要因を自分自身でコントロールできるようにしていく方法であるため、減薬・断薬プログラムとしても応用することができます。バイオフィードバック、呼吸法、筋弛緩法、自律訓練法、誘導イメージ法などの行動療法、マインドフルネス認知行動療法、分子栄養療法、臨床アロマセラピーなど補完代替療法を併用しながら、無理のないペースで減薬・断薬していくことを目標としています。