【薬に頼らない治療】ナチュラル心療内科のブログ

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2人で行うマインドフルネス瞑想 ~エサレンマッサージ~

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エサレン独自のボディーワークとして、エサレンマッサージが有名です。スウェーディッシュオイルマッサージを基本とし、エサレン独自の波の音に合わせながらのロングストロークと言われる手先から足先まで途切れることなく流れるようなオイルマッサージが特徴的です。また、身体や手足を揺らしたり動かしたりすることで身体の深部にアプローチし、立体的な感覚をも意識することができるようにしていきます。

1人で行うマインドフルネス瞑想での、「今この瞬間の心と身体の変化」の評価しない気づきといった体験を、ボディーワークを通じてセラピストと2人で共有していくのがエサレンマッサージです。セラピストは、気づき“アウェアネス”とともに今ここに意識を向け“プレゼンス”、今この瞬間の現実の世界やクライアント、そして自分自身との繋がり“コネクション”を大切にしながら施術していくのです。

今から約20年前、サンフランシスコ州立大学ホリスティックヘルス研究所に留学していた時、エサレン研究所の週末のワークショップに何度か参加したことがあります。その時に、エサレンマッサージの基本手技を少し習ったり、自分自身がセラピストからマッサージを受けたりしました。カリフォルニアの透き通るような青空の下で、広い芝生の上に置かれたマッサージテーブルの上で波の音を聴きながら初めてエサレンマッサージを受けた時の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。終わった後はタオルにくるまったまま深い眠りに落ちていきました。

エサレン研究所Esalen Institute

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米国カリフォルニア州モントレーから南に向かって車で2時間ほどの海岸沿いにあるエサレン研究所は、1962年にスタンフォード大学医学部学生だったマイケル・マーフィーと心理学を専攻していたリチャード・プライスの2人により創設されました。エサレンという名称は先住民であるエセレン(Esselen)族に由来しており、エサレン研究所はその聖地にあります。

元々はマーフィーの祖母の土地だった温泉地に、プライスの父親からの資金援助でエサレン研究所が設立され、東洋と西洋、古代と現代、宗教と科学、芸術と学問を統合(synthesis)することで人の潜在能力を追求していく、“ヒューマン・ポテンシャル・ムーヴメント”(人間性回復運動)の発祥の地となったのです。そのため、当時の著名な心理学者や哲学者の多くがエサレン研究所を訪れています。

文化人類学・精神医学の専門家であるグレゴリー・ベイトソン、来訪者中心療法のカール・ロジャーズ、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、人間性心理学のアブラハム・マズローといった現代心理学の大御所もエサレン研究所での活動に関わっていました。近年一般的となっているコーチングもエサレン研究所での潜在能力開発実験から始まっており、コーチングをビジネス領域に用いたのもエサレン関係者なのです。

身体心理療法としてのボディーワーク

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従来の心理療法やカウンセリングは「こころ」を中心にアプローチしてきました。そのため時間がかかり、効果も個人差が大きくセラピストの技量によるところが多いという側面がありました。それに対して身体と心の両方にアプローチする身体心理学的アプローチは、ボディーワークとして米国を中心に1960年代からさまざまな技法が考案されており、治療効果も通常の心理療法に比べると格段に早く認められています。

日本の心療内科における心身医学療法の中に、生体エネルギー療法と翻訳されたバイオエナジェティクスが含まれています。実際に行われることはほとんどなかったようですが、1980年代の日本でも心身医学領域で身体心理学的治療法がすでに存在していたのです。平成元年に九州大学心療内科で1年間心身医学の研修を受けた時にも、ヨーガや内気功といった身体からのアプローチの臨床応用や生理学的研究がすでに行われていました。

米国では、バイオエナジェティクス以外にも、ロルフィング、フェルデンクライス・メソッド、アレクサンダー・テクニック、ホロトロピック・ブレスワークなど、身体から働きかけて心を癒された状態に変えていく身体心理療法として数多くのボディーワークが存在しています。このようなボディーワークは、身体心理療法の梁山泊とでも言えるカリフォルニア州ビッグサーにあるエサレン研究所を中心に広がっていったのです。

身体心理学的アプローチ

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トラウマによるシャットダウン状態は、そのトラウマ状況に適応するための正常な反応と考えられます。解離状態、転換反応、失感情症、失体感症などの症状は、トラウマ体験から自らを守るための背側迷走神経の働きにより引き起こされます。本来適応的な反応であるこれらの症状が、あるところで固まって動きが取れなくなってしまい、必要でない状況でも同様の反応をしてしまうと病気として治療の対象となってしまうのです。

効果的なトラウマ治療においては、このシャットダウンの閾値と生理学的状態を変化させています。その結果、再び社会的な交流ができるようになり症状も改善していくのです。ポリヴェーガル理論においては、他者との交流により生理学的状態を協働調整することができると考えており、そのためには「安全である」と感じることが重要であり、セラピストの役割はそれを可能とする信頼関係を作ることでもあると言えます。

安全であると感じる環境で、固まっている生理学的状態(呼吸、心拍、筋緊張など)を少しずつ改善していくことが、ポリヴェーガル理論における効果的なトラウマ治療であるとポージェス博士は考えています。これまでの、「トラウマは心の病気である」という考えではなく、トラウマ状況への適応的な身体の生理反応が固定した状態であるという考え方により、身体からのアプローチを併用した「身体心理学的治療法」という新しい潮流が広がりつつあります。

良い不動化反応とオキシトシン

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「社会交流(腹側迷走神経他)」「可動化(交感神経)」「不動化(背側迷走神経)」の3つのシステムは実際には同時に働いており、その時々の状況に適応できるよう行動や感情を調整していると考えられています。例えば、皆で楽しく遊んだりスポーツをしたりしている状況は、社会交流神経系が十分働いている時の可動化状態と言えます。逆に社会交流神経系が機能していない状況での可動化は、対人緊張やケンカが起こりやすくなります。

また、社会交流神経系が十分働いている時の不動化は、安全で安心できる状況でじっと動かないでいることができる状態と言えます。例えば、お互いに寄り添ったり、抱きしめ合ったりしている時や、出産・授乳時などの不動状態は、良い意味での不動化が起こっているのです。生命の危機的状況下ではシャットダウンという防衛戦略として機能する背側迷走神経は、親密な関係や生殖、母性などにおいても重要な役割を果たしています。

不動化の背側迷走神経を調整している脳幹の迷走神経背側運動核にはオキシトシン受容体があり、安全で安心できる状況では社会的絆や愛着と関係しているオキシトシンが分泌されることで、背側迷走神経は恐怖のない「良い」不動化反応を起こしているとポージェス博士は考えています。ちなみに、オキシトシン研究の第一人者であるスー・カーター博士は、ポージェス博士の共同研究者であると同時に妻でもあります。

ストレス/トラウマ理解に役立つポリヴェーガル理論

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「社会交流」「可動化」「不動化」の3通りの異なった生存戦略という視点から自律神経を説明したポリヴェーガル理論は、仮説の一つでありこれから多くの研究による検証が必要ではありますが、心と身体の症状や病気のメカニズムについて多くの示唆を与えてくれます。特にストレスやトラウマが影響するような場合には、その病態を理解する一助となることでしょう。

生まれてから幼小児期にかけての神経系の発達プロセスにおいて、交感神経が中心の可動化と背側迷走神経が中心の不動化状態は系統発生的に古くから存在しているシステムであり出産後の早期から機能しているのに対して、最も新しい腹側迷走神経を含めた社会交流神経系は、身近の家族との関わりを通じて神経細胞の可塑性により徐々に習得されていくと考えられます。

生まれたばかりの脳は五感をフルに活用して、これから生きていかなければならない世界についての情報収集をしていきます。この情報が心地良い「快」感覚かそうでない「不快」感覚かにより、安全で安心できる世界なのか、危険に満ちていて絶えず苦痛を感じる世界なのかを判断し、その世界を生きていくための生存戦略を日々の生活の経験を通じて学習していくことになるのです。

アブミ骨筋の筋トレ?によるセラピー

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表情豊かに抑揚のついた声で話している時、ニューロセプションは「安全」と判断し、社会交流神経系の顔面神経がアブミ骨筋を収縮させています。抑揚のある声は周波数帯がリズミカルに変化しているため、アブミ骨筋も緊張または弛緩状態で固まった状態にならず、顔面神経による微調整により柔軟に変化していると考えられます。その結果、雑音の中でも人の声を聞き分けることができるのです。

抑揚のある歌を歌ったり音楽を聴いたりすることは、心理的な要因だけでなくアブミ骨筋のストレッチやマッサージのような効果もあると思われます。その結果、高い周波数帯である人の声が聴き取りやすくなり、人とのコミュニケーションが良好になったり、聴覚過敏状態が改善したりすることも起こりうるのではないでしょうか。音楽療法も、このようなことが効果の一要因として影響しているのかもしれません。

ポージェス博士は、この聴覚刺激を使った独自の治療法であるリスニング・プロジェクト・プロトコル(LPP)(現在はセーフ・アンド・サウンド・プロトコル(SSP)と呼ばれている)を開発しています。この方法は、コンピュータで大きく抑揚をつけた歌声が含まれる音楽を繰り返し聴かせることで、アブミ骨筋の調節機能を活発化させ聴覚過敏を改善したり、腹側迷走神経を刺激し社会交流神経系を回復させたりすることを目標としています。

 

聴覚過敏

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「危険」で「不安」な状況では、まず身を守るために本能的に捕食動物の唸り声のような低い周波数帯の音に注意を向け警戒する必要があり、中耳のアブミ骨筋は弛緩状態となります。その結果、不審な物音などの低い周波数帯の音には気付き易くなるのですが、人の声は逆に聴き取りにくくなってしまいます。「安全」で「安心」できる環境において、初めて人との会話に意識を向けることができるのです。

このような現象は、周囲の雑音が大きく聞こえて人の声を聴き取りにくくなる聴覚過敏と似ています。自閉症やうつ状態、統合失調症、PTSDなどでよくみられる症状ですが、同時に表情や声の抑揚に乏しく迷走神経による心拍数の抑制が弱く頻脈になるという社会交流神経系が上手く働いていな状態も認められます。これらの症状は、生物行動学的観点からは絶えず危険に対して耳を澄ませて警戒し続けている状態と言えます。

自閉症や言葉の発達の遅れには、高い周波数の子音が聞き取れないことで単語の意味が理解できないということが大きく影響していると、ポリヴェーガル理論のポージェス博士は考えています。ニューロセプションが世の中を危険と判断し、アブミ骨筋が弛緩した状態で捕食動物の唸り声と同じような低い低周波数帯の音を警戒する状態が聴覚過敏であり、その結果高い周波数帯の子音を含む言葉を聞き取れず理解できなくなるのです。

最も小さな骨と筋肉が危険から身を守る

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周囲の環境が「安全」か「危険」かを無意識下で判断するニューロセプションの中でも、聴覚からの情報はとても重要です。例えば、オオカミなど捕食動物の唸り声のように単調で低い周波数帯の音や声に対して「危険」と感じ、優しい女性の声や子守歌などのような抑揚のある高い周波数帯の声には「安全/安心」を感じています。これは進化の過程で、低い周波数帯の音と捕食動物を結びつける神経回路が形成されているからです。

耳の中(中耳)には、耳小骨という人体で最も小さな3つの骨が連なって鼓膜からの音の振動を内耳に伝えています。この時に音の振動を調整しているのが、アブミ骨筋というわずか3mm程の体内で一番小さな筋肉です。この筋肉は社会交流神経系の一つである有髄の顔面神経でコントロールされており、緊張させることで低い大きなエネルギーを持った音が入らないようにして耳を守ったり、高い周波数帯の人の声を聴き取ったりしているのです。

低い周波数帯の音が多い雑踏の中で人の声を聴き取ることができるのは、このアブミ骨筋を適度に緊張させることで、高い周波数帯である人の声を選択しているからなのです。逆にアブミ骨筋が弛緩していると、低い周波数帯の大きなエネルギーを持った音が内耳に伝わり人の声は聴き取りにくくなります。これは捕食動物への警戒態勢が優先された状態で、ニューロセプションが「危険」と判断していることによります。

無意識下の危険察知システム ~ニューロセプション~

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ポリヴェーガル理論では、「安全」「危険」「生命の危機」の状態は無意識下で察知され、それぞれの状況に応じた自律神経システムが働くと考えられています。このプロセスは意識的な知覚(パーセプション)とは異なり、無意識レベルでの反射であり、ポージェス博士は「ニューロセプション」という言葉で表現しています。このニューロセプションは、五感刺激の中で主に視覚と聴覚からの情報により大きな影響を受けます。

神経系による無意識下での危険評価システムであるニューロセプションによる生理学的反応は、動悸や腹部症状などの内受容感覚として感じることができます。また不安感や第六感として感じ取ることもあります。このニューロセプションによる一連の反応は個人差が大きく影響しています。同じストレス状況でも、どのようなニューロセプション反応が起こり、その結果どのような生理学的状態になるかは人により異なっているのです。

トラウマ治療などにおいては、ニューロセプションを通じて「安全である」と感じ、安心できる落ちついた生理学的状態に入ることができるように環境を整えることが重要となります。特に生命の危険を感じるようなトラウマ体験においては、不動化のシャットダウン状態を経験しているためニューロセプションが安全を感知することが難しく、社会的交流に必要な生理学的状態を前提とする一般的なカウンセリングなどは効果が限定され時間がかかってしまうのです。