【薬に頼らない治療】ナチュラル心療内科のブログ

三ノ宮駅から徒歩5分 ナチュラル心療内科クリニックのブログです。

社会(交流)神経系(Social engagement system)

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

人も含めた哺乳動物は、離れた距離から五感を通じて安全を確かめながら相手に次第に近づくことで社会的な交流を持ち、ストレス状況を早期に解決しておくという生存戦略を取っています。そのために必要な身体の反応は、鼓膜の振動を音に変換する中耳の筋肉、声を出すための声帯、食べ物を飲み込む嚥下や味覚、頭を動かすといった頭頚部の筋肉や感覚器官が主役となります。

これらのコミュニケーションに必要な神経システムが、脳神経の中でも有髄神経である腹側迷走神経、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経であり、ポージェスは「社会(交流)神経系」という新しい概念で説明しています。哺乳類は生まれてから母乳により育てられます。生まれたばかりの子供が母親からの養育を受けるための生存戦略として、この社会(交流)神経系が重要な役割を果たすことになります。

哺乳類は母親の注意を引き母乳を与えてもらいながら、生きていくための他者との関わり方を学習し成長することで、安全で安心できる環境を集団の中に築き上げているのです。人間の場合も同様で、まずは母子関係から始まり、家族、学校、会社と次第に大きな集団に適応していく中で社会(交流)神経系も成長発達していくことになります。そのため幼小児期の生育環境が、その後の人生の心身の健康状態に大きく影響することになるのです。

社会的交流という生存戦略

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

ポリヴェーガル理論によると、ストレス(環境)への反応方法の優先順位は、系統発生学的により新しい自律神経システムから順番に使われます。自律神経系の基本的な役割は、動物が環境に適応しながら生存していくための全自動操縦を24時間休むことなく行うことです。 全ての地球上の生物は共生関係にあり、特に動植物は食物連鎖という宿命から逃れることができず、自律神経も身の安全が最優先課題となります。

進化の過程で最も新しい社会的交流のための神経システムは、群れを作る哺乳類で発達しました。自然界での生存戦略として、哺乳類はお互いにコミュニケーションを取ることで安全で安心できる環境を確保してきたのです。そのために必要な言語や表情、感情のコントロールに関係する脳や筋肉の働きも、それに伴って進化してきたことになります。自律神経においては、有髄の腹側迷走神経が重要な役割を果たしています。

人間社会においても、まず相手を理解しようとすることからコミュニケーションが始まり、必要な情報収集のために五感をフルに動員することになります。そこで、相手が自分にとって安全で安心できる人間であるかを判断する手がかりとなるのが、声の調子や大きさ、表情や仕草、姿勢や行動、服装など身だしなみといった視覚や聴覚からの情報です。さらに嗅覚や味覚も共に食事をするなどの行動や体臭を通じて判断材料となります。最終的には触れるという触覚も使い安全・安心を確認し社会的な繋がりを形作っているのです。

自律神経の新しい考え方

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

従来の解剖生理学では、自律神経系は交感神経と副交感神経の2種類ということになっていましたが、近年、米国のステファン・ポージェス博士が1994年に提唱したポリヴェーガル理論が、新しい自律神経の考え方として注目されています。この理論においては、爬虫類から哺乳類への進化の過程における神経細胞の変化と生物の生存戦略という視点から、自律神経を次の3つの役割から分類しています。

この分類では副交感神経の中心となる迷走神経を、背側核由来と腹側核(疑核)由来の2つに分けています。
1.不動化(Immobilization):不動、擬死(死んだふり)、徐脈、無呼吸、感覚麻痺、失神、解離、脱糞など
2.可動化(Mobilization):行動(動いている状態)、闘争/逃走反応、防衛反応など
3.社会的交流(Social communication/engagement):他者との意思疎通、遊び、社会適応、自己鎮静など

一番目の不動化は、系統発生的に最も古くから脊椎動物全てに存在している、神経伝達スピードが遅い無髄(ミエリン鞘がない)の「背側迷走神経」の働きにより起こります。二番目の可動化は、次に古い硬骨魚から認められている「交感神経」の働きが中心となります。三番目の社会的交流は、哺乳類に特有な神経伝達スピードが速い有髄(ミエリン鞘がある)の「腹側迷走神経」が大きな役割を果たしていると言われています。

自律神経はブレーキでスピードコントロール

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

自律神経系/内分泌系/免疫系といった調整系は、生きていくための環境への適応システムとして全自動で24時間休むことなく働いています。特に生命にとっての危機的状況においては、このシステムが闘争/逃走反応として瞬時に機能し、身体を守るために必要な心身のパフォーマンスを最大限に高めてくれます。この時の自律神経系の働きとしては交感神経系優位な状態となり、心拍数が増え血圧も高くなっています。

ストレスに対する適応手段として、この交感神経系の働きによる闘争/逃走反応が人も含めた哺乳動物において起こるということが一般的に知られていますが、エネルギー再生のための副交感神経系も重要な役割を果たしています。例えば呼吸性心拍変動においては、吸気時は交感神経系優位な状態となり心拍数が90/分ぐらいにまで増加しますが、これは交感神経の活動が亢進するのではなく副交感神経の働きが抑制された結果起こっているのです。

すなわち通常は、交感神経は身体を動かすシステムとして絶えず速めの心拍数を維持しており、副交感神経がブレーキ役としてその時々の環境への適応に必要な心拍数を決めていることになります。車の運転に例えると、走っている時も停止している時もアクセルはいつもある程度踏み込んだ状態で運転しており、同時にブレーキを踏み込んだり緩めたりすることでスピードコントロールしたり止まったりしていることになるのです。

心と心の繋がりと心拍変動

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

とても仲の良い人同士、人と動物との間では心拍変動パターンが同期することがあるといわれています。ハートマス研究所の研究によると、感謝などのポジティブな感情を伴った呼吸トレーニングを実践している同じ職場で働いている仲の良い女性同士の間で、心拍変動が同期したとのことでした。また、長年連れ添ったとても仲の良い夫婦の夜間睡眠中のホルター(持続)心電図の結果でも心拍変動の同期現象が認められています。

人と動物との間の心拍変動の同期現象については、別々の部屋で待機していた15歳の少年と彼の愛犬が同じ部屋で会った瞬間からお互いの心拍変動が一貫性のある安定した状態に変化し、再び離れて別々の部屋に入ると不規則な心拍変動に戻ったというケースが紹介されていました。研究所の報告では、このような同期現象はいつでも起こるというわけではなく、ある一定の条件がそろった時にのみ起こりうるとのことです。

カウンセリングやセラピーにおいて信頼関係(ラポール)を築く技法として、相手の話し方や声の調子、動作、感情、呼吸などに合わせるペーシングがあります。日本語でも「気が合う」「息が合う」「呼吸を合わせる」など、良好な関係を示す表現としてよく使われます。とても仲が良い相手と一緒にいる時に、無意識にお互いの呼吸パターンが一致している時には、安定した呼吸性心拍変動が重要な役割を果たしているのかもしれません。

タッチ(触れること)による情報交換

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

心臓から発する電磁場が離れている人にも伝わっているということは、触れている時にはもっと強く伝わっていることになります。このことについては、McCrathyらが1998年に報告した研究があります。この実験では、1メートル20センチ離れて座った2人の被験者の脳波と心電図を同時に測定しながら、10分間の安静状態の後に5分間お互いの手で握手する状態で両者の心電図と脳波の変化を比較検討しています。

この実験では、右手で握手した時が相手の左右どちらの手と握手しても、自分の脳波に相手の心電図の影響が最も強く出たとのことです。左手の場合は右手に比べて相手の心電図の影響が小さくなり、相手も左手の場合は最も心電図の影響が弱いか測定不可能だったと報告しています。また、ラテックスのゴム手袋をして握手した場合は反応の強さが約10分の1に減り、逆に電極用ジェルを塗った場合の変化はなかったようです。

離れている時は心拍動が生じる弱い電磁場を介しての影響が主となるのに対して、直接触れている時には心筋の収縮による電気的な情報伝搬が主となるため、より強い信号として相手に伝わっていると考えられます。タッチやマッサージなど触れるという行為は、社会的な繋がりを促すオキシトシンの分泌を促すと言われていますが、一貫性のある安定した心拍変動リズムも重要な役割を果たしているのかもしれません。

共感とは互いの心電図と脳波の同期現象?

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

心臓の拍動時に生じる微小電流により生じた生体磁場は、超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いた磁気センサーで心磁図として身体に触れることなく検出することができます。このことから、心臓の活動は電磁場として他人にも影響を及ぼしうるのではないかという仮説を立てることができます。この仮説を検証するための興味深い研究が米国のHeartMath研究所で行われています。

1メートル50センチ離れて、向かい合って座った2名の被験者の脳波と心電図を同時に測定しながら、感謝や思いやりや愛といったポジティブな感情を二人に思い浮かべてもらうという実験を実施したところ、より安定した一貫性のあるコヒーレントな心拍変動の人の脳波は、もう一人の心電図に同期したパターンに変化したということです。逆に心拍変動が不安定な人の脳波は、相手の心電図に同期することはありませんでした。

心臓の拍動が作り出す磁場の強さは脳が作り出す磁場の約五千倍と言われており、その磁場が自分だけでなく他人の脳の磁場にも影響を与えているのかもしれません。この他人の心拍による電磁場の変化を自分の脳が捉えるためには、自分自身の安定した心拍変動による自分の脳波の安定化が必要で、その結果、相手の心拍変動の状態に自分の脳波が同期して「共感」という現象が起こるのではないかとこの論文では考察しています。

心-脳相関

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

心臓は小さな脳であるということから、心臓と脳はお互いに密接な情報交換を行っているという「心-脳相関」とでも言うべき考え方が注目されています。これまでもストレス反応として、心拍数が速くなったり血圧が上昇したりという脳から心臓への影響は良く知られていますが、その逆の心拍リズムや心臓で産生されるホルモンが脳に影響を与えるということも起こっていることになります。

以前は、感情は脳の働きということになっていましたが、この「心-脳相関」という観点から、近年脳と心臓がお互いに影響し合いながら感情や思考を創り出していると考えられるようになってきました。心臓の小さな脳は、大脳皮質による思考、推理、随意運動などの高次機能以外の部分で、重要な働きを担っていると言われています。実際、心臓が作り出す脈圧、心音、電磁場のリズムは、身体中の全ての細胞に伝わっています。

このように心臓は身体中の細胞や臓器が、調和を持って健康状態を維持できるように同期させる様々な信号を発信しているのです。これらの信号の中で、電磁波は瞬時に、神経系の信号は8ミリ秒後に、血圧の信号は240ミリ秒後に脳に到達しています。同様のことが脳以外の身体中の細胞にも起こっています。丁度、多くの楽器が素晴らしい音楽を奏でるオーケストラの指揮者のような役割を、心臓は担っていると言えるでしょう。

心臓は小さな脳

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

神経心臓学を専門としているカナダのモントリオール大学名誉教授で、米国カリフォルニア州立大学(UCLA)医学部非常勤教授のアンドリュー・アーマー博士(J. Andrew Armour, M.D., Ph.D.)によると、心臓には約4万個のニューロンから成る、解剖生理学的に脳と同じ神経構造Heart Brain(心臓脳)が存在しているとのことです。この心臓脳は、大脳とは関係なく学習、記憶、決定、知覚などの働きを独自にしているということがわかっています。

脳からの自律神経の交感・副交感神経による心臓への信号と、血圧、心拍数、心拍リズム、ホルモンを感知する心臓から脳への感覚神経ニューロンの信号の両方が心臓の内在神経系には存在しており、脳から心臓へ送られる情報量より、心臓から脳へ送られる情報量の方がはるかに多いということがわかっています。また、内在心臓神経系には、脳からの信号とは無関係に働く長期と短期の記憶機能もあると言われています。

また、心臓でストレスホルモンの分泌を抑制する心房性ペプチドというホルモンが作られているということが1983年に発見され、心臓は循環器系だけでなく内分泌系臓器にも分類されるようになりました。その後の研究で、脳と神経節だけで作られていると考えられていたカテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン)や、愛情ホルモンとして近年注目されているオキシトシンも心臓でも産生されていることが明らかになっています。

ハート❤呼吸でストレスを解消

natural-blog, · カテゴリー: 未分類

心拍変動バイオフィードバックのもう一つの方法として、呼吸と同時にポジティブな感情を意識するコヒーレンス法(Quick Coherence Technique)があります。これは、米国のハートマス研究所のエムウェーブという心拍変動バイオフィードバック装置を使ったメンタルトレーニング法で、ハート呼吸(Heart Breathing)という胸の心臓(ハート♡)の辺りを呼吸による空気が通過するイメージを用います。

ひと呼吸約10秒前後のゆっくりとした呼吸に合わせて、ハート♡の辺りを空気が流れていくイメージと同時にポジティブな感情を思い浮かべるようにします。「感謝」「思いやり」「愛」など自分にとって大切な特別な人や動物への気持ちや、ワクワクした楽しい気持ちなどを、その場面をイメージしながら感じるようにします。そうすることで、不規則だった心拍リズムが一貫性のある安定した状態(コヒーレンス状態)に変化します。

心拍が安定したリズムに変化することで、自律神経を介して内分泌(ホルモン)や免疫の働きにも影響を及ぼし、心と身体を最適な健康状態に導いてくれます。このコヒーレンス法を毎日練習することで、ハート呼吸とポジティブな感情を条件付けすることができます。その結果、日常のストレス場面でもハートに意識を向けるだけで、瞬時に気持ちを切り替えることができるようになります。