【薬に頼らない治療】ナチュラル心療内科のブログ

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哺乳類の不動化による防衛戦略

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哺乳動物における不動化は、捕食動物に捉えられても一瞬の隙に逃げ去るというラストチャンスを狙った防衛反応と言えます。中でも極端な不動化による擬死状態になる哺乳動物として有袋類のオポッサムが有名です。一般的な哺乳動物は、外敵に遭遇した場合交感神経の働きによる闘争・逃走反応をまず試みますが、オポッサムはいきなり身体を丸めて固まったように横に倒れ、半開きの口から舌を出し腐敗臭(死臭)を漂わせるのです。

人間の場合は、「気を失って倒れる」「意識はあるが身体の一部または全体が全く動かなくなる」「普段とは異なった意識状態になる」「感情や感覚を感じなくなる」「身体の感覚がわからなくなる」などの反応として不動化による防衛機制が起こります。哺乳動物としての人は、実はこれらの反応によりストレス状況から身を守っているのですが、人間社会では普段とは違う異常状態であり、転換反応、解離状態、失感情症、失体感症などと表現され「症状」や「病気」として扱われます。

最近のDVや虐待の報道においても、被害者である子供や女性にも恐らく無意識の防御反応としての不動化が起こっていたのではないでしょうか。3通りの防衛反応の中で、2番目の交感神経系優位の闘争・逃走反応は、加害者との力関係が同等または優位である時に選択できます。しかし圧倒的な力関係の差がある場合は自分の生命を守るために、無意識レベルで3番目の不動化が起こると考えられ、その結果身体が固まってしまい全く抵抗できない状態になってしまうのです。この状態は、本来背側迷走神経による正常な防御反応であり、本人に非は全くないのです。

昆虫や爬虫類は擬死(死んだふり)で身を守る

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哺乳類では生存戦略の最終手段となる不動化戦略は、昆虫や爬虫類では主役となります。例えばてんとう虫やバッタなどに触れると、固まってしまい全く動かなくなります。これは、昆虫の主な捕食者であるカエル、トカゲ、クモなどは動くものしか攻撃しないため、不動化戦略が昆虫にとっては最善の防御手段となるのです。擬死の持続時間は通常数分から数十分ですが甲虫類の場合は数時間に及ぶこともあるそうです。

トカゲなどの爬虫類も、身に危険を感じるとじっとして動かなくなり背景に溶け込んでしまいます。元々酸素消費量が哺乳動物に比べて非常に少ないため、無呼吸状態でも代謝を落とした仮死状態になることで数時間は生命活動を維持することができるのです。爬虫類の迷走神経は無髄の太古の迷走神経で、「不動」「徐脈」「無呼吸」という極端にエネルギー消費を抑えた状態にすることで捕食される危険から身を守ってきたのです。

系統発生学的に、爬虫類と違って哺乳類は2つの迷走神経回路を持っています。爬虫類と同じ無髄の迷走神経と、進化の過程で有髄化されている哺乳類特有の神経回路です。哺乳類における無髄の迷走神経は、安全な環境下では内臓の働きを制御し恒常性を維持するという、一般的な副交感神経としての働きをしています。しかし、この神経系が防衛反応として使われたときには、哺乳類でも「不動」「徐脈」「無呼吸」状態になり、代謝を落としたシャットダウンシステムが働き完全に脱力して崩れ落ちたようになってしまうのです。

 

最終手段の“不動化”という防衛戦略

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ストレス状況下で身を守る闘争・逃走反応は、自律神経系の進化の過程で2番目に発達した交感神経の働きが主役となります。この身体を動かす可動化(Mobilization)で対応できなかった場合、最終手段である不動化(Immobilization)という防御反応を選択することになります。この時の主役は、系統発生的に最も古い無髄の背側迷走神経という自律神経です。この動かなくなる不動化には、身を守るために次の2通りの役割があります。

一つが擬死(死んだふり)と言われる一種の仮死状態になることで、捕食動物から逃れる最後のチャンスを作り出すことです。昆虫や爬虫類でよく見られますが、哺乳類や鳥類でも最終手段としてこの状態になります。もう一つは、最終的に捕食動物に食べられることになった場合、一切の感覚を遮断し気を失った状態になることで、全く苦痛を感じないで最期を迎えることができるようにということです。

捕食動物は本能的に動くものを追いかけようとします。これは腐敗した状態の獲物は食べないため、動いているということで食べても安全であると判断しているからです。そのため、全く動かない状態になることで獲物と認識されず助かる可能性が出てきます。そして、たとえ捕まったとしても抵抗しなければ、捕食動物の自律神経が闘争から休息(お食事モード)に切り替わり、一瞬の油断した隙に逃げ出すこともできるのです。

防御反応としての症状の役割

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今この瞬間の現実の出来事ではない脳内の仮想現実世界にも、自律神経系・内分泌系・免疫系といった心身の調整システムは反応します。そのため、ストレス状況から離れた後もずっと交感神経過緊張状態の心身の防衛反応は続いてしまうのです。その結果、不眠、不安、緊張といった症状が続きエネルギーを消耗してしまい、最終的にはうつ状態といったバッテリー切れ状態になってしまいます。

慢性的なストレスが続いたり非常に強いストレス状況を体験したりすることで、この闘争・逃走反応に必要な交感神経系優位な自律神経の神経ネットワークを使い続けることになります。そして神経可塑性という神経細胞の特徴により、日常的に絶えず闘争・逃走反応の準備状態としての交感神経系優位状態が学習されてしまい、睡眠障害、不安障害、頭痛、高血圧などの様々な症状やストレス関連の心身の病気が引き起こされます。

病気の初期症状は、動物としての様々なストレスへの正常な防御反応が原因の一つとして関わっていると考えられます。特にヒトにおいては、自然環境の変化だけでなく人間関係というストレスの影響が大きく、これらのストレスに日々どのように対処していくかが重要な鍵となります。原因不明の症状は、ストレスへの対処が必要な状態だということを本人に伝えるための警報アラームとしての役割を持っているとも言えるのです。

防御のための第2の選択肢:闘争・逃走反応

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社会(交流)神経系による最初の生存戦略が上手くいかなかった場合、二番目の交感神経系による防衛反応の出番となります。脳の中では警報アラームが鳴り、心と身体は身を守るための臨戦態勢の準備を始めます。危険を早期にキャッチするため過覚醒による感覚過敏状態となり、不安・緊張感を高めることで絶えず周囲を警戒し始めます。いざという時に瞬時に行動することができるように、交感神経系が働き身を守るための準備をするのです。

1929年にキャノンにより初めて提唱された「闘争・逃走反応fight and flight」という交感神経の過緊張状態により、心拍数を増やし血圧を上げ闘ったり逃げたりするために必要なエネルギーを筋肉や脳に供給することになります。同時に副腎からストレスホルモンのコルチゾールやアドレナリンなどが分泌され、血糖値を上げストレス状況から身を守るために必要なエネルギーの材料を補給します。

自然界の動物における「闘争・逃走反応」は、ほとんどの場合短時間で終わります。無事身を守ることができれば交感神経系優位の防衛反応は終了し、消耗したエネルギーを再生するために副交感神経優位の状態に切り替わり、再びゆっくりと休んだり熟睡したりすることができるようになるのです。しかし人間の場合は大脳皮質の発達により過去を思い出したり未来を心配したりすることができるため、いつまでも交感神経系優位な状態が続いてしまいます。

社会(交流)神経系(Social engagement system)

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人も含めた哺乳動物は、離れた距離から五感を通じて安全を確かめながら相手に次第に近づくことで社会的な交流を持ち、ストレス状況を早期に解決しておくという生存戦略を取っています。そのために必要な身体の反応は、鼓膜の振動を音に変換する中耳の筋肉、声を出すための声帯、食べ物を飲み込む嚥下や味覚、頭を動かすといった頭頚部の筋肉や感覚器官が主役となります。

これらのコミュニケーションに必要な神経システムが、脳神経の中でも有髄神経である腹側迷走神経、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経であり、ポージェスは「社会(交流)神経系」という新しい概念で説明しています。哺乳類は生まれてから母乳により育てられます。生まれたばかりの子供が母親からの養育を受けるための生存戦略として、この社会(交流)神経系が重要な役割を果たすことになります。

哺乳類は母親の注意を引き母乳を与えてもらいながら、生きていくための他者との関わり方を学習し成長することで、安全で安心できる環境を集団の中に築き上げているのです。人間の場合も同様で、まずは母子関係から始まり、家族、学校、会社と次第に大きな集団に適応していく中で社会(交流)神経系も成長発達していくことになります。そのため幼小児期の生育環境が、その後の人生の心身の健康状態に大きく影響することになるのです。

社会的交流という生存戦略

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ポリヴェーガル理論によると、ストレス(環境)への反応方法の優先順位は、系統発生学的により新しい自律神経システムから順番に使われます。自律神経系の基本的な役割は、動物が環境に適応しながら生存していくための全自動操縦を24時間休むことなく行うことです。 全ての地球上の生物は共生関係にあり、特に動植物は食物連鎖という宿命から逃れることができず、自律神経も身の安全が最優先課題となります。

進化の過程で最も新しい社会的交流のための神経システムは、群れを作る哺乳類で発達しました。自然界での生存戦略として、哺乳類はお互いにコミュニケーションを取ることで安全で安心できる環境を確保してきたのです。そのために必要な言語や表情、感情のコントロールに関係する脳や筋肉の働きも、それに伴って進化してきたことになります。自律神経においては、有髄の腹側迷走神経が重要な役割を果たしています。

人間社会においても、まず相手を理解しようとすることからコミュニケーションが始まり、必要な情報収集のために五感をフルに動員することになります。そこで、相手が自分にとって安全で安心できる人間であるかを判断する手がかりとなるのが、声の調子や大きさ、表情や仕草、姿勢や行動、服装など身だしなみといった視覚や聴覚からの情報です。さらに嗅覚や味覚も共に食事をするなどの行動や体臭を通じて判断材料となります。最終的には触れるという触覚も使い安全・安心を確認し社会的な繋がりを形作っているのです。

自律神経の新しい考え方

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従来の解剖生理学では、自律神経系は交感神経と副交感神経の2種類ということになっていましたが、近年、米国のステファン・ポージェス博士が1994年に提唱したポリヴェーガル理論が、新しい自律神経の考え方として注目されています。この理論においては、爬虫類から哺乳類への進化の過程における神経細胞の変化と生物の生存戦略という視点から、自律神経を次の3つの役割から分類しています。

この分類では副交感神経の中心となる迷走神経を、背側核由来と腹側核(疑核)由来の2つに分けています。
1.不動化(Immobilization):不動、擬死(死んだふり)、徐脈、無呼吸、感覚麻痺、失神、解離、脱糞など
2.可動化(Mobilization):行動(動いている状態)、闘争/逃走反応、防衛反応など
3.社会的交流(Social communication/engagement):他者との意思疎通、遊び、社会適応、自己鎮静など

一番目の不動化は、系統発生的に最も古くから脊椎動物全てに存在している、神経伝達スピードが遅い無髄(ミエリン鞘がない)の「背側迷走神経」の働きにより起こります。二番目の可動化は、次に古い硬骨魚から認められている「交感神経」の働きが中心となります。三番目の社会的交流は、哺乳類に特有な神経伝達スピードが速い有髄(ミエリン鞘がある)の「腹側迷走神経」が大きな役割を果たしていると言われています。

自律神経はブレーキでスピードコントロール

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自律神経系/内分泌系/免疫系といった調整系は、生きていくための環境への適応システムとして全自動で24時間休むことなく働いています。特に生命にとっての危機的状況においては、このシステムが闘争/逃走反応として瞬時に機能し、身体を守るために必要な心身のパフォーマンスを最大限に高めてくれます。この時の自律神経系の働きとしては交感神経系優位な状態となり、心拍数が増え血圧も高くなっています。

ストレスに対する適応手段として、この交感神経系の働きによる闘争/逃走反応が人も含めた哺乳動物において起こるということが一般的に知られていますが、エネルギー再生のための副交感神経系も重要な役割を果たしています。例えば呼吸性心拍変動においては、吸気時は交感神経系優位な状態となり心拍数が90/分ぐらいにまで増加しますが、これは交感神経の活動が亢進するのではなく副交感神経の働きが抑制された結果起こっているのです。

すなわち通常は、交感神経は身体を動かすシステムとして絶えず速めの心拍数を維持しており、副交感神経がブレーキ役としてその時々の環境への適応に必要な心拍数を決めていることになります。車の運転に例えると、走っている時も停止している時もアクセルはいつもある程度踏み込んだ状態で運転しており、同時にブレーキを踏み込んだり緩めたりすることでスピードコントロールしたり止まったりしていることになるのです。

心と心の繋がりと心拍変動

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とても仲の良い人同士、人と動物との間では心拍変動パターンが同期することがあるといわれています。ハートマス研究所の研究によると、感謝などのポジティブな感情を伴った呼吸トレーニングを実践している同じ職場で働いている仲の良い女性同士の間で、心拍変動が同期したとのことでした。また、長年連れ添ったとても仲の良い夫婦の夜間睡眠中のホルター(持続)心電図の結果でも心拍変動の同期現象が認められています。

人と動物との間の心拍変動の同期現象については、別々の部屋で待機していた15歳の少年と彼の愛犬が同じ部屋で会った瞬間からお互いの心拍変動が一貫性のある安定した状態に変化し、再び離れて別々の部屋に入ると不規則な心拍変動に戻ったというケースが紹介されていました。研究所の報告では、このような同期現象はいつでも起こるというわけではなく、ある一定の条件がそろった時にのみ起こりうるとのことです。

カウンセリングやセラピーにおいて信頼関係(ラポール)を築く技法として、相手の話し方や声の調子、動作、感情、呼吸などに合わせるペーシングがあります。日本語でも「気が合う」「息が合う」「呼吸を合わせる」など、良好な関係を示す表現としてよく使われます。とても仲が良い相手と一緒にいる時に、無意識にお互いの呼吸パターンが一致している時には、安定した呼吸性心拍変動が重要な役割を果たしているのかもしれません。