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哺乳類の不動化による防衛戦略

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哺乳動物における不動化は、捕食動物に捉えられても一瞬の隙に逃げ去るというラストチャンスを狙った防衛反応と言えます。中でも極端な不動化による擬死状態になる哺乳動物として有袋類のオポッサムが有名です。一般的な哺乳動物は、外敵に遭遇した場合交感神経の働きによる闘争・逃走反応をまず試みますが、オポッサムはいきなり身体を丸めて固まったように横に倒れ、半開きの口から舌を出し腐敗臭(死臭)を漂わせるのです。

人間の場合は、「気を失って倒れる」「意識はあるが身体の一部または全体が全く動かなくなる」「普段とは異なった意識状態になる」「感情や感覚を感じなくなる」「身体の感覚がわからなくなる」などの反応として不動化による防衛機制が起こります。哺乳動物としての人は、実はこれらの反応によりストレス状況から身を守っているのですが、人間社会では普段とは違う異常状態であり、転換反応、解離状態、失感情症、失体感症などと表現され「症状」や「病気」として扱われます。

最近のDVや虐待の報道においても、被害者である子供や女性にも恐らく無意識の防御反応としての不動化が起こっていたのではないでしょうか。3通りの防衛反応の中で、2番目の交感神経系優位の闘争・逃走反応は、加害者との力関係が同等または優位である時に選択できます。しかし圧倒的な力関係の差がある場合は自分の生命を守るために、無意識レベルで3番目の不動化が起こると考えられ、その結果身体が固まってしまい全く抵抗できない状態になってしまうのです。この状態は、本来背側迷走神経による正常な防御反応であり、本人に非は全くないのです。